しんりの手 :psych NOTe -2ページ目

新しい案を学ぶ時はまず辞書、そして教科書

心理学で自分の知らない項目を学ぶのに、僕がいつも使う方法がある。この方法には3段階のプロセスがある。(1)一言解説、(2)一ページ解説、(3)一章解説、という順番でいつも調べる。


人間の脳というのは未知の案を幾つもいっぺんに理解できない。作動記憶(ワーキング・メモリー)の容量にも速度にも限界があるからだ。なので知らない単語や案が出てきた時にはそれを一つ一つやっつけていく必要がある。その順番としては当然、まず大枠のアイディアを知り、そしてその後に詳細を学んでいくということになる。このやり方に則って、僕が実践している方法はこうだ。


(1)一言解説

辞書など短い一文で解説されているのが分かりやすい。例えば利他主義(altruism)という案が分からないとする。まずは辞書、特に心理学辞書が良いでしょう。僕が定義するとすれば「自分の利益よりも他人の利益を優先する行動」といったところでしょうか。僕のお勧めする辞書はこれ(Sutherland, The International Dictionary of Psychology )。


(2)一ページ解説

もう少し知りたい時に使うのが、その案が一ページくらいで解説されている本。これには初級心理学の教科書か心理学の歴史の本がお勧め。ちなみに僕が愛用している本「心理学」(Bernstein, et al.Psychology )では「利他主義」に関して、ひとはなぜ他人を助けるのかを5ページに渡って解説している。これは僕の理想よりもちょっと長めだけど、小見出しがいくつか付いているので読みたいところだけ拾い読みができるのでなかなか良い。


(3)一章解説

もっと知りたい場合はその案を章単位で解説している論文や本が必要になる。これは大抵(2)の本が引用しているのを辿れば良い本が見つかる。



授業の課題で論文を読む時とか学部にいる時とかはとにかく論文から読んでしまいがちなんだよね。でも大枠の案が分からないまま論文を読んでも意味不明のままだ。なんで、そんな時もまずは基本の案を辞書でひいて、その案について教科書を一ページだけ読んで、それから論文を読むことをお勧めします。


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心理学のお勧め辞書

N. S. Sutherland, Stuart Sutherland
The International Dictionary of Psychology

加齢で衰える感覚

acuity test

人間の体は加齢とともに特定の能力が著しく衰える。この研究者はそれを人間の五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)に対して調べている。


視覚で衰えるものは遠距離視力(far acuity)、近距離視力(near acuity)、立体視(stereopsis)、輝度知覚(コントラスト感度, contrast sensitivity)、視覚探索(visual search)、有効視野(UFOV, useful field of view)、照り返し(glare)、その他に色の知覚など。詳しい数値付きでよく資料を揃えている文献だな。


ちょっと驚いたのは、近距離視力の加齢による低下。近距離視力ってのは30cmくらいの近距離の文字を読む検査。近距離視力だと30歳くらいでは平均で視力1.2くらいなのに、60歳くらいではすでに視力0.4くらいにまで下がってしまう。これだと新聞とか読むのもつらいだろうなぁ。ただし矯正視力(つまり眼鏡など付けた状態)では加齢しても視力1.0くらいになれる。


普段、僕らが学校で測ってもらうようなのは遠距離視力といって4メートルくらい離れたところから文字を読む検査。遠距離視力だと30歳くらいでは視力0.8くらいが平均で、80歳くらいになっても視力0.6くらいで殆ど衰えはない。これは車を運転中に何メートルも離れた標識を読むような場合だな。


まとめると、衰えが急激なものと緩やかなものがあるので、老人向けに何かをデザインする場合には的確なデータを使うと良いね。老人向けに印刷物をデザインするなら近距離視力のデータを使うべきで、衰えの緩やかな遠距離視力のデータを使ってもあまり妥当性がない。更に遠距離視力のデータのほうが入手しやすいけどね。


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元の文献:

Frank Schieber (1992) Aging and the senses. p.251-306. この文献はこの本から。

James E. Birren, R. Bruce Sloane, Gene D. Cohen
Handbook of Mental Health and Aging

検索キーワード: 心理学、知覚心理学、認知心理学、老人学、 生物心理学、ヒューマン・ファクターズ心理学、エルゴノミクス、老人学、ウェブ・デザイン、verdana, log graph, cognitive psychology, psychology, gerontology, web design, human-computer interaction,  知覚 視覚 コントラスト感度 contrast sensitivity spatial frequency 色弱 空間周波数 老化 若者 一般

心理学で重要な人ベスト10

Rank individual rank points
1 B.F.SKINNER 508
2 SIGMUND FREUD 459
3 WILLIAM JAMES 372
4 JEAN PIAGET 237
5 G. STANLEY HALL 216
6 WILHELM WUNDT 203
7 CARL ROGERS 192
8 JOHN B. WATSON 188
9 IVAN PAVLOV 152
10 E.L. THORNDIKE 124

引用元: (2001). P.10,

Wayne Weiten

Psychology With Infotrac: Themes & Variations (第5判)


心理学で重要な人、ベスト10は上の図のとおり。得点の付け方は知らないけど、基本的に2つの要素が必要みたいだな。


(1)心理学の基盤を作った先人

みんな活躍した時代が古いよね。活躍した時代が新しい人だとスキナーとカール・ロジャーズかな。スキナーが行動主義を提唱してスキナー箱を使ってたのは1950年代だよね。ロジャーズの来訪者中心療法も1950年代。その他はみんなそれより古くに活躍した人。最も古くに心理学を始めた学者として、ヴント、ウィリアム・ジェームズ、スタンリー・ホール。


(2)今でも影響が強い人

スキナー、ワトソン、パブロフは今でも行動主義の基盤になっている。ソーンダイクはやはり行動主義やコネクショニズム(connectionism)の基盤を昔に作ったけれど、今ではあまり使われていないので順位が低いのかな。フロイド、ユング、ロジャーズは現在使われている心理療法に影響している。ただ、フロイトは否定する人も多い(過去記事「フロイトは死んだ」 )。


全体で見れば無難なランキングかな。スタンリー・ホールの順位が高いのが唯一の意外。手持ちの辞書によると、彼は「フロイト、ユンクをアメリカに招き精神分析的な考え方を心理学に導入した」(心理学辞典)そうです。そんな間接的な貢献じゃなくて、直接的な貢献度で順位付けをしたのを見てみたいね。




引用元:

外林 大作
誠信心理学辞典  

検索キーワード: 心理学、B.F.スキナー、シグムンド・フロイド、ウィリアム・ジェームズ、ジーン・ピアジェ、スタンリー・ホール、ウィルヘルム・ヴント、カール・ロジャーズ、ジョーン・ワトソン、イヴァン・パブロフ、E.L.ソーンダイク、

[本の紹介]野口 悠紀雄「超」英語法

野口 悠紀雄
「超」英語法

去年の話だけれど、友達が「野口 悠紀雄「超」英語法 」という本をわざわざ日本から送ってくれた。彼はこれで英語を勉強してためになったという。読んでみると確かに実践すれば英語がより分かるようになるだろうな、と思う練習法がいろいろ紹介されている。そこで、心理学の院生の立場から紹介されている勉強法を検証してみますよ。


この本で掲げる目標は、ニュースの英語を聞き取れるようになること。この本によると、英語が読まれる速さは媒体によって違う。TOEIC(英語のテスト)で140語/分と遅く、ニュースで160語(±20語)/分。少し早口の会話で180語だそうだ。


で、この本では速く読まれる英語にいかに慣れていくかの方法をいろいろ紹介している。でもこの前提になっている部分、分かりますか?著者の野口さんは、英語が一語一語区切られて遅く読まれれば日本人でも理解できる、と考えているんだよね。アメリカに自称「留学」で来る日本人はこの時点で問題を抱えている人も多いよね。遅い英語でも分からない人は自分のレベルに合った文をとにかくたくさん読むか聞くかして分からない単語は辞書で何十回でもひくと良いでしょう。これについては後日また書きます。


聞き取りの練習として、内容を既に理解しているものをシャドウイング(聞いた英語をそのまま言う)を行うことを野口さんは薦めている。これは僕も賛成。英語を勉強している人の中でかなりの人が、英語=かっこいい、の図式の延長で、より難しい英語で勉強=かっこいい、と考えている向きがある。だけど、自分のレベルに合った英語や内容が理解できる英語での練習の方がうまくなるのはずっと早い。僕がお勧めする市販の教材は後日に紹介しますよ。


この本の中で一番おいしいのは第5章「聞く練習を実践する」。ここではインターネットで無料で入手できる英語のリスニング教材をたくさん紹介している。これは使える。
あとは第7章で紹介されている「丸暗記勉強法」もとても良い。これは僕も実践してとても効果を上げた。要は、良い英語で書かれた段落を丸まる暗記して、自分でしゃべるときにはそれを応用して喋る。第二言語なんていうのは、結局は頭で考えながら習うスキルだ。真似する(コピーする)というのはどんなスキルを習うにもまずは第一のステップになること。このステップを飛ばしていきなり応用の「喋る」をするのは難しいだろう。 丸暗記は使える。

総合して、英語を学ぶ人に実際に何をしたら良いかを教えてくれる良書。だた、僕には全く必要ないと思われる章もいくつかあったんで読み飛ばすことをお勧めします。いらないのは第3章のカタカナ英語と第4章のアクセントのあたり。


野口 悠紀雄
「超」英語法

人間が処理できる言葉の速さ

words per minute


人間が言語を操る時の限界の速度を示したグラフ。


これによると人間は速い人で英語580語くらいを一分間に黙読できるらしい。うーん、これは一般人レベルではないなぁ。ケネディ大統領が一分間に600語黙読できたってのですごい天才だと言われていたけれど、一般のアメリカの大学生くらいだと一分間に黙読できる量は250語くらいって研究を以前読んだよ。ちなみに生粋の日本人の僕でもアメリカで大学院生をやってる身分上、250語/分くらいの読書速度は必要です。英語を速く読むコツについてはそのうちに記事を書きたいなぁ。


グラフの中段より下を見ていくと、タイプする限界の速度は150語/分なのに対して、手書きだと30語/分と極端に遅くなるんだな。アメリカの大学や院だと授業中にパソコンやキーボードでノートを取る人も多いよね。クラスに2人くらい、割合にして20%の人がしてる。これだけ圧倒的な差があれば納得。


日本語のタイプだと変換とかあるからもう少し遅くなるのかな。でも日本語は喋る速度も遅いからあんまり問題じゃないか。


ノートに文字を書くのって本当に遅いんだな。とりあえず英語で教える時に生徒にノートを取らせるんなら、このくらいのペースなんだな、というのを理解しておくと授業を組み立てやすいかもね。



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引用元:

Robert W. Bailey
Human Performance Engineering: Designing High Quality, Professional User Interfaces for Computer Products, Applications, and Systems
検索キーワード: 心理学、言語心理学、人間の能力、工学心理学、認知心理学、ユーザー・インターフェース、コンピューター、デザイン、words per minute, WPM,

人間の記憶のメカニズムをロボットから探る

Krichmar robot

クリッチマー博士のロボットは見て、触り、考えて、動く。


Krichmar brain model

クリッチマー博士のロボット「ダーウィン7号」(写真上)の「脳」のモデル(写真下)が雑誌に載っていたんで、心理学の面から検証してみますよ。


人間の視覚情報処理では、目から入った情報が物体の識別と物体の位置との2つの情報として別の経路で処理されます。このロボットのモデルでもそうなっています(object identification, object location)。そしてその情報が海馬(hippocampus)に行くわけです。海馬は長期記憶と考えると分かりやすいかもしれません。人間の脳もロポットのモデルもほぼ同じ情報の経路で進んでいます。


僕が考えるに、こういったロボットのモデルは心理学にはない圧倒的な利点があります。それは現実的でなければいけないこと。現実に動かなきゃ意味がないから。


具体的に例を挙げてみると、以前は心理学では記憶のモデルとして「感覚器→短期記憶→長期記憶」というのが一般に信じられていました。今では誤りだと信じられているこのモデルを、このロボットに組み込めるか考えてみましょう。


カメラ(感覚器)で捕らえた映像が「物体識別の器官」に行きます。以前の誤った記憶モデルだとここが短期記憶だと考えられてきました。なぜなら短期記憶というのは、長期記憶に保存される直前の一時的な記憶の保管場所だからです。これがなぜ誤りか。それは、物体を識別するのには過去の(長期)記憶が必要だからです。例えば今、僕の手元にある青いボールペンは長期記憶無しにそれをペンとは認識できません。感覚からの素の情報だけでは、それは青い視覚刺激でしかありません。


現実的なロボットのモデルに当てはめてみる事で、誤ったモデルであることが分かります。ちゃんとこのロボットのモデルでは物体を識別する際に長期記憶(海馬hippocampus)から情報を受け取ることを示す矢印が書かれていますね。

心理学で空想的な記憶のモデルをどうひり出そうが、こういった現実的に働く記憶のモデルの説得力には勝てません。今後、心理学とこのロボットの研究者がどう協力して研究を進めていけるのか、将来がすごく楽しみです。

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写真の引用元と元の記事:

New Scientist, 5 November 2005, p.30.


記憶のモデルを詳しく説明している本:

Robert A. Bjork, Elizabeth Ligon Bjork。この本の第一章(Harold Pashler & Mark Carrier)が分かりやすい。Memory (Handbook of Perception & Cognition S.)


記憶に関しての本。第39章(daniel Schacter, Anthony Wagner, Randy Buckner)で記憶のシステム派と反対派をさらっと紹介。

Endel Tulving, Fergus I. M. Craik

The Oxford Handbook of Memory


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訓練の効率をソフトボールに見てみる。

訓練の効率をソフトボールに見てみる。

ソフトボールをしていて心理学のことが頭に浮かんだんでちょっと紹介。「訓練の伝達率」とか「訓練の効率」(transfer of training)という心理学の案がある。訓練がどのくらい実践に役立つかを計算できる式で表される。



ソフトボールが大得意で州大会で優勝したこともあるケイティーちゃんの場合、山なりに落ちてくるボールに対して水平に振るバットとの交差点を点で捉えようとしていた(上図)。これだと空振りする確率が高い上に、子供用のふわふわボールは伸びきった芝生の上で殆ど転がらないんでまったくヒットにならないんだよね。なのでケイティーちゃんは訓練を4年間くらいした割りに、その訓練の効率は低かったことになる。言い方を変えれば、ソフトボールの経験はふわふわボールにはあまり活かせない。



それに対して、僕はソフトボールの経験なんて中学の休み時間にした程度なんで、何も知らない。今回、友達がボールの進入角度に対して平行にバットを振るのを見まねて(上図)、打ち上げてただけなんだけど、守りが二人しかいないんで(走者は透明ランナー)、フライは大抵がヒットにつながるというおいしい人数。この場合、僕が受けた訓練は「観察による学習」(observational learning)がほんの1分間くらいで、成果が大きかったことになる。


つまり、いくら似通ったスポーツや職種であれ、訓練がどのくらい効率よく実践に活かせるかというのは場合によって異なるので、教育者は訓練効率が高い教え方を選ばなければならない。ちょっと強引な結論へのもって行き方だけど、そんなところよ。運動の指導者も教育の指導者も生徒が何を学べるかを主眼に置いた教育をすると効率が上がるでしょう。



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訓練の効率についてはこの本の第7章がうまくまとまっている。


Christopher D. Wickens, Justin Hollands
Engineering Psychology and Human Performance

検索キーワード: 心理学、工業心理学、工学心理学、認知心理学、ヒューマン・ファクターズ心理学、エルゴノミクス、

久しぶりの休みを楽しんでいます。

foam bat

春学期が先週終わった僕ら院生は今まで学期中にできなかった全ての飢えを取り戻すかのように一般人並の生活を貪欲に消化していっています。今週一週間は、映画(ミッション・インポッシブル3)を見て、飲みに行って、バレーボールをして、BBQをして、飲みに行って、ビデオ(The Cave)を見て、飲みに行って、オペラを見て、飲みに行って、ソフトボールをして、飲みに行って。そんな感じで、来週に夏学期が始まるまでのほんの束の間の一般人生活を楽しんでいますよ。

で、昨日ソフトボールをした時は準備が散々でねぇ。院生が何人も集まってんのに全く計画性が無くて、俺らもかなり間抜けだよなぁ、と自嘲してしまったよ。


まずケイティーちゃんの車の中に野球の硬球を発見。で、ソフトボールやろうぜってことになって、僕らを含めて4人のメンバーを確保。でもね、4人がみんな揃う前にいろいろな準備不足に気付くわけですよ。まず4人で遊ぶのにグラブを持ってるのはケイティーちゃんひとりだけという事実。普段勉強漬けの院生の手はやわで硬球を素手で取るなんてできないし。更に数十分して、「あれ?私たちバットも無いじゃん。」と気づく。結局は幼児向けのふわふわスポンジ・ボールとウレタンで保護された幼児向けバットで遊ぶソフトボールもどきに格下げですよ。


まぁ、そんなぐだぐだなソフトボールでも、腐ってもアメリカ人。スポンジのボールを使ってんのに女の子でも普通に50m級のホームラン連発でね、ピッチャーひとり、バッター(と透明ランナー)ひとり、守り2人だとみんな異常に疲れるんだよね。結果論としては、普段、体を動かす機会が無い僕ら院生にとっては幼児向けのボールとバットで大正解でしたね。


えー、まとめとして、心理学の大学院生は心理学の知識や研究には強いけれど、普段の生活では呆れるくらいお馬鹿な時があります。以上。


今日はダビンチ・コードを見に行って、その後はパーティーに行ってきます。皆さんも良い夏休みを!

老人向けには大きな文字を。

maximum resolvable frequency


年を取ると細かい文字が見えにくくなる。どのくらい見えにくいかというのを表したグラフが上図。


これは変調伝達関数(MTF: Modulation transfer function)と呼ばれるグラフで、Y軸が明るさ。X軸が物体の大きさ。で、グラフ上の線より下が見える範囲で、線より上が見えない範囲。


例えば白っぽい紙の上の灰色っぽい文字を見るときに、その2色の色の明るさの違いが0.01(つまり1%)しかないとする。これはY軸上の0.01にあたる。X軸は文字の小ささで、1度の視覚角度の中に何本の線があるかであらわされる。一度の角度というのは概ね腕を伸ばしたときの親指の幅に当たるので、この幅に10本の線(と10本の空白)があるとすれば、それはX軸上の10にあたる。


この表によると、若い人(20歳)だと一度の角度の中に6本の線くらいの大きさの文字が最も見やすい(Yの値が高い)と言える(Stanley Coren, Lawrence M. Ward, James T. Enns Sensation and Perception )。これはマイクロソフト・ワードで試してみると、「ヴァーダーナ」という文字種の太字で24ポイントの大きさくらいだ。


これが老人(80歳)になるとYの値が一番高いのはXが1.00くらいのところ、つまり一度の角度にたったの一本の線が一番見やすい大きさだ。これを僕の親指で試してみると160ポイントと言う馬鹿でかい文字の大きさが必要になってしまう。


要は、老人向けには文字をかなり大きくした印刷物やウェブのデザインが必要ですよ、ということです。


この表は別の用途にも使える。老人はどのくらい小さい文字まで読めるか。Y軸の1.00のラインを見てみる。この値は、明るさがはっきり違う場合。例として真っ白の紙に真っ黒の文字など。若い人だと一度の角度に50本くらいの線までは読み取れるのにたいして、老人は一度の角度に20本以下の線までしか読み取れない。どんなに明るさを調整したとしても。


結論は同じで、老人向けに何かをデザインするのなら、文字は大きめにした方が良さそうだね。


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情報元の本:

Stanley Coren, Lawrence M. Ward, James T. Enns
Sensation and Perception

より詳しい資料やデザインの相談はメールにて受け付けています。


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関連する過去の記事

視神経的に見やすいブログ1:明暗感度 (しんりの手)

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検索キーワード: 心理学、ログ・グラフ、認知心理学、老人学、ウェブ・デザイン、verdana, log graph, cognitive psychology, psychology, gerontology, web design, human-computer interaction,  知覚 視覚 コントラスト感度 contrast sensitivity spatial frequency 色弱 空間周波数 老化 若者 一般

3歳以下へのテレビは良くないけれど、現実問題として使えるかも。

ericahill

CNN(ニュース放送局)でエリカ・ヒル(写真)の番組が幼児向けのテレビ放送についてうまくまとめていたんで紹介します。


最近、3歳以下の幼児を対象としたテレビ放送「BabyFirstTV 」が開局した。この放送局では24時間、幼児向けの放送がコマーシャル無しで見られる。しかし幼児のテレビ視聴はいろいろな悪影響をもたらすと言われているが、専門家の意見はどうだろう。


反対派:マイケル・リッチ博士(Michael Rich)

「テレビを見る量と肥満や健康問題には密接な関係があります。子供にはテレビを見せるべきではありません。更に2歳半以下の子供はテレビからは何も学ばないか、学ぶとしてもごくわずかという研究があります。子供に必要なのはテレビではなく人との相互交流です。粘土などおもちゃのほうがずっと安くて利点もあります。」


賛成派:カミール・チャッタージー(Camille Chatterjee)、雑誌「Parenting」編集者

「テレビが幼児に悪いことには賛成です。人との相互交流が幼児にとってより大事なことにも異議はありません。しかし現実問題として、親がシャワーを浴びている時など、テレビが使い勝手が良いんです。そんな時に暴力的な番組や肥満につながるような粗悪な食品の宣伝入りの番組を見せるよりは、こういった幼児向けの放送局というのは重宝されます。」


というのが両者の主張の趣旨だったと思います。まとめると

1.テレビを見る時間が長いほど肥満につながる。

2.暴力的な番組をみる子(の一部)は暴力的な行動をとるようになる。

3.食品の宣伝は肥満につながる。

4.少なくとも2歳半以下にテレビを見せるのは良くない。

5.テレビよりも、人と接することの方が子供にとっては大事。



これだけスムースな議論も珍しいね。CNNの人選も段取りもすべてパーフェクト!ただ、話が速すぎてちゃんとノートが取れなかったんで細かい間違いがあるかも。間違っていたら失礼。

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関連する過去の記事:
3歳までのテレビは学習能力低下。それ以降は学習促進。 (しんりの手)


テレビを見るといじめっ子に 。(しんりの手)

近視は生活習慣から (しんりの手)

テレビは年間2万人を殺す-ドイツ (しんりの手)


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