老人向けには大きな文字を。 | しんりの手 :psych NOTe

老人向けには大きな文字を。

maximum resolvable frequency


年を取ると細かい文字が見えにくくなる。どのくらい見えにくいかというのを表したグラフが上図。


これは変調伝達関数(MTF: Modulation transfer function)と呼ばれるグラフで、Y軸が明るさ。X軸が物体の大きさ。で、グラフ上の線より下が見える範囲で、線より上が見えない範囲。


例えば白っぽい紙の上の灰色っぽい文字を見るときに、その2色の色の明るさの違いが0.01(つまり1%)しかないとする。これはY軸上の0.01にあたる。X軸は文字の小ささで、1度の視覚角度の中に何本の線があるかであらわされる。一度の角度というのは概ね腕を伸ばしたときの親指の幅に当たるので、この幅に10本の線(と10本の空白)があるとすれば、それはX軸上の10にあたる。


この表によると、若い人(20歳)だと一度の角度の中に6本の線くらいの大きさの文字が最も見やすい(Yの値が高い)と言える(Stanley Coren, Lawrence M. Ward, James T. Enns Sensation and Perception )。これはマイクロソフト・ワードで試してみると、「ヴァーダーナ」という文字種の太字で24ポイントの大きさくらいだ。


これが老人(80歳)になるとYの値が一番高いのはXが1.00くらいのところ、つまり一度の角度にたったの一本の線が一番見やすい大きさだ。これを僕の親指で試してみると160ポイントと言う馬鹿でかい文字の大きさが必要になってしまう。


要は、老人向けには文字をかなり大きくした印刷物やウェブのデザインが必要ですよ、ということです。


この表は別の用途にも使える。老人はどのくらい小さい文字まで読めるか。Y軸の1.00のラインを見てみる。この値は、明るさがはっきり違う場合。例として真っ白の紙に真っ黒の文字など。若い人だと一度の角度に50本くらいの線までは読み取れるのにたいして、老人は一度の角度に20本以下の線までしか読み取れない。どんなに明るさを調整したとしても。


結論は同じで、老人向けに何かをデザインするのなら、文字は大きめにした方が良さそうだね。


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情報元の本:

Stanley Coren, Lawrence M. Ward, James T. Enns
Sensation and Perception

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