知能指数を神経生物学から見る | しんりの手 :psych NOTe

知能指数を神経生物学から見る

Rooy74

この上の図は現在の心理学の研究されている分野をうまく表しているなぁ。
これはアイゼンク(Eysenck, 1988)のモデルなんだけど、3つの円のうち、真ん中がIQ(知能指数)だ。アイゼンクの案では別名「心理的な能力が表す知能指数」(psychometric intelligence)。一般にはIQ、知能指数と呼ばれる。これは主に5つの要素から予測される。それは1.文化要素、2.家庭の躾、3.社会経済状態、4.教育、5.左の円。
左の円は「生物学的な知能指数」(biological intelligence)。これはEEG(脳電図)やRT(反応時間)などにより間接的に測定される。この生物学的な知能指数に影響するものが3つあり、生理学的な特質、遺伝、生物化学的な特質だ。
右の円は社会的な知能指数「social intelligence」。12の要素+(心理的な)知能指数から予想される。

心理学の多くの研究は上のどれかに当てはまる。例えば認知神経科学は左の円のあたりを研究する。臨床心理学は右の円の辺りの研究。なんで、心理学の研究のつながりを見るのに面白い図だと思う。しかし、こうしてみると心理学って抽象的な測定が多いんだな。例えば知能指数なんてのは「空想上の機能」(putative function)と呼ばれていて、人間が便宜上に作った秤に過ぎない。この図の中ではっきりと測れる物は左の円とその他では栄養素(nutrition)、飲酒嗜好(drinking habit)くらいなもんだな。


論文に戻ります。これによるとEEG(脳電図)の周波数と知能は8歳児では相関関数が0.5となかなか大きかった、しかし12歳児では関連性が無かった、などの過去の研究の紹介がある。で、結論はアルファ周波数は認知能力と相関する、などを挙げている。アルファ周波数がコンピューターのクロック数みたいだとして、それが脳の処理速度を測れるとしたらそれは面白い。でもそれは処理速度(の更にその一部)を測れるに過ぎず、知能指数の別の要素、つまり論理的思考や経験などを測れるわけではない。その辺も含めて将来もっと研究されるのを期待している。

引用元の本:
Con Stough (2005年)
Neurobiology Of Exceptionality (Plenum Series on Human Exceptionality)

Cindy Van Rooy, John Song, and Con Stough, Neurobiology of Intelligence, pp.73-

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